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初めての歯科用3Dプリンター導入ガイド|方式の違いと必要な準備とは?

2025.06.06
コラム

口腔内スキャナーによるデジタル印象採得が保険適用(インレーに限る)となったことを受け、
歯科医院のデジタル技工機器導入がより現実的な選択肢となりつつあります。

これに伴い、弊社でも歯科用3Dプリンターに関するお問い合わせが少しずつ増えてきました。
なかでも、アライナー矯正用模型やサージカルガイドなどの内製化を目的に検討されるケースが目立ちます。

一方で「3Dプリンターの価格の違いって何?」「導入にあたって何が必要なの?」といった質問も多くいただきます。

そこで今回は導入にあたって知っておきたい基本的なポイントを、わかりやすくご紹介いたします。

■ 光造形方式(DLP/LCD/SLA)の違い

歯科用3Dプリンターで主流なのは「光造形方式」です。液体レジン(光硬化樹脂)を光で硬化させて積層造形する方式ですが、
その中にもいくつかの違いがあります。

① DLP方式(Digital Light Processing)

特徴
プロジェクターを使って一度に「面」で光を照射し、レジンを硬化させる方式。歯科業界でも多く採用されている造形方式です。

メリット

  • 精度とスピードのバランスが良く、短時間で安定した造形が可能

  • 均一な照射により、再現性の高い造形が得られやすい

  • 光源の劣化が少なく、長期間の運用に向いている

  • アライナー模型、クラウン、サージカルガイドなど幅広い用途に対応

留意点

  • 一部の製品は本体価格が中〜高価格帯となる傾向がある

  • 使用頻度や機種によっては、光源ユニットの交換コストを考慮する必要がある

  • 精度が高い分、メーカーが指定する材料の使用を推奨されるケースがある

② LCD方式(Liquid Crystal Display)

特徴
紫外線光源をLCDパネルで制御し、レジンを一括硬化する方式。手頃な価格帯と扱いやすさから、近年注目されています。

メリット

  • 初期投資を抑えやすく、導入しやすい価格帯

  • 構造がシンプルで、日常的な運用において扱いやすい

  • 模型や簡易ガイドなど、限定的な用途での活用に適している

留意点

  • 長時間の連続造形や高頻度の使用では、出力品質に変化が生じる可能性がある

  • 使用環境や機種によっては、部品の交換や定期点検が必要になる場合がある

  • 業務量が多い医院では、運用計画を慎重に検討することが望ましい

③ SLA方式(StereoLithography Apparatus

特徴
レーザーで一点ずつ樹脂を硬化させて積層していく方式。一般工業分野でも長く利用されてきた技術で、研究用などでも活用されています。

メリット

  • 高精細な造形が可能で、微細な形状の再現性に優れている

  • 表面の滑らかさにおいて一定の評価がある

  • 特定のラボ用途では活用されている実績あり

留意点

  • 造形に時間を要する場合があり、運用スタイルによっては計画的なスケジュールが求められる

  • 高度な精度を実現するため、日常的な保守や管理が重要となる

  • 導入にあたっては、費用対効果や用途との適合性を慎重に検討することが推奨される

■ 導入に必要な基本構成の例

3Dプリンター本体だけでは製作できません。以下の設備・ソフトが必要です。

① 3Dプリンター本体

用途に応じて選定(例:アライナー用なら広い造形範囲、クラウンやガイドなら精度重視など)

② デザインソフト(CAD)

アライナー:3Shape Ortho System、ArchForm、Bluesky Plan など
クラウン・模型:exocad、DentalCAD、Medit Design など

③ STL編集ソフト(必要に応じて)

データ修正やサポート材の調整に使用。ChituboxやMeshmixerなど

④ 洗浄機・UV硬化機

プリント直後のレジンを洗い流し、最終硬化させるための専用装置

⑤ 専用レジン

用途に応じて選定(例:アライナー模型用、ガイド用、テンポラリークラウン用など)

■ 導入コストと運用の概算目安

項目 費用の目安
3Dプリンター本体 50〜300万円
CADソフト 30〜100万円(年間ライセンス制もある)
洗浄・硬化機 10〜50万円
消耗品(レジン・アルコール等) 月1〜5万円程度
合計初期費用 約100万〜400万円程度

■ まとめ

歯科用3Dプリンターの導入は、近年ますます身近な選択肢となってきています。ただし、造形方式の違いや設計ソフトとの連携によって、運用効率や仕上がりに違いが生じることもあります。

大切なのことは「何を作りたいのか」という目的をはっきりさせたうえで、それに最適なシステムを選定することです。
目的とツールがきちんとかみ合えば、内製化の効果をより確実に感じていただけるはずです。

機種選びや運用のご相談など、導入をご検討中の方は、どうぞお気軽に弊社までお問い合わせください。

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